1年前のマーケットレポートを読んでみた

昨年の夏のマーケットはコロナから疑心暗鬼のなか回復を始めた時期です。当時専門家がどのようにマーケットを見ていたのか、その後のマーケットをどのように予想していたのかを振り返ってみたいと思います。すべてを読み返すことはできないので、今回はメガバンク系2社、大手証券系1社の運用会社のレポートを見ていきたいと思います。

NYダウ平均株価チャート(ヤフーファイナン)

レポート公表時点のNYダウ平均株価は約26,000ドルです。

A社

大手銀行系の運用会社です。

2020年7月末時点で世界経済については下記のように見ていました。

世界経済は新型コロナ感染拡大による最悪期を脱し、少しずつ明るさを取り戻しつつあります。主要国の景気指標を見ると、3月から回復に転じた中国に続き、米国やユーロ圏でも5月から底固めの動きが鮮明化、直近6月は、米欧でPMIを含め企業景況感の上振れも目立ちました。一方、雇用の改善が鈍いため、消費者レベルで景気回復を実感できるまでには至っていないともいえます。

先進国では一段と業況回復が鮮明になると見る一方、コロナ第2波懸念により経済正常化に対しては慎重な見方をしています。

株価については、

感染第2波の確度が高まるなか、強気派は第1波の経験値(感染抑制措置を体験)に期待する向き、弱気派は有効なワクチンや治療薬のい現状や実体経済とかい離する株高やその過熱感を警戒する向きが強そうです。当面は想定外の財政金融緩和発表や景気指標上振れに伴う株高、感染急増や国際政治不安などを契機とした突発的な株安、双方のリスクに備える必要があります。

と予想外の上昇や下落、双方への備えが必要、と見ていました。

6か月後(2021年1月)のNYダウ平均株価は、23,000~25,000ドル、と予想していました。

B社

大手銀行系運用会社です。2020年7月末のレポートで米国株式市場について以下のようにコメントしています。

金融・財政政策と経済再開はプラスだが、好材料はかなり織り込まれている。政策効果によって下振れリスクは和らいだが、感染再拡大の影響、21年の景気・業績の回復に関し見方が分かれおり、3カ月後の大統領選挙が不透明要因となっている。今後、ファンダメンタ
ルズの改善が確認されれば、上昇局面が再開しようが、NYダウ、S&P500種指数は当面もみ合いの展開を想定する。一方、ハイテクセクターのウエイトが高いナスダック総合指数は総じて堅調な展開が続こう。

新型コロナウイルスの感染拡大懸念は続こう。もっとも本格的な都市封鎖(ロックダウン)へ戻らないよう対策が打たれれば、需要の回復は見込めよう。一方、コロナ対策第4弾を巡る財政協議は、両党の対立から遅れている。ただ、トランプ政権と民主党の溝は埋まり
つつある模様で、成立の可能性は高いと予想する。

なお、米中の対立はハイテク分野や人権面、軍事面などで激しさを増そう。米大統領選挙を強く意識したものだが、米経済の回復を阻害しないことが前提であり、米株式市場の期待形成にマイナスの影響を与える可能性は限定されよう。

そのうえで今後の見通しは、

金融財政政策と経済再開はプラスだが、好材料は織り込まれている。政策効果で下振れリスクは和らいだが、感染再拡大の影響、2021年の景気・業績の回復に関し見方が分かれている上、3カ月後の大統領選が不透明要因。先行きファンダメンタルズ改善が確認されれば上昇局面が再開しようが、当面はもみ合い。

としていました。2021年7月-9月のNYダウ平均株価は、下値21,600ドル、上値29,100ドル、着地26,600ドル、と予想していました。

C社

大手証券系運用会社です。2020年7月末のレポートで世界経済について以下のようにコメントしています。

この1カ月を振り返ると、世界的に、特に米国で新型コロナウイルス新規感染者数の再拡大傾向が顕著となり、一部の州では経済活動再開を抑制する動きもみられた。しかし、そうした中でも世界の株価はレンジ内で堅調に推移した。大局的には、新型コロナの感染が抑制されつつ景気回復も妨げられない均衡点への収束過程にある。

新型コロナ感染第2波による景気や株価の下振れが懸念される中、ポジティブ要因は米小売売上高がV字回復をしたことだ。これは、期待先行でV字回復していた株価の正当性を裏打ちするものだとも言える。また、米国では新型コロナの新規感染者数が増加しているものの、新規死亡者数は抑制されており、深刻さの度合いは3~4月とは異なる。

米国株式市場については、金利水準から株価に過度の割高感はないが株価の上昇はすでに来年以降の回復を織り込んだ水準、来期以降の回復が見込めるが慎重に対応するべき、としています。

NYダウ平均株価は、2020年末に25,600ドル、2021年末に27,900ドル、と予想していました。

感想

抜粋で執筆者の真意がきちんと読み取れているのかわかりませんが以下のような印象を持ちました。

  • 短期的な目線で値動きを解説している
  • 株価予想については、現在値を中心に毎月変わっていく(ほとんど予想の意味がないのでは)
  • 毎月いろいろと解説しているが過去のレポートや予想についての評価がない

業界の人たちがどのようにマーケットを見ているのか、何が起こっているのか、を理解するためには参考になりますが、企業の成長の果実を受取ることを目的とする長期投資にはほとんど役に立たないと改めて感じました。