取崩し運用シミュレーション 2020年8月末
上の2つの図は 2013年末に3000万円で運用を開始、その後半年ごと(6月と12月)に(A):63万円(税前)、同じく半年ごとに(B):80.01万円、の取崩しをした場合のシミュレーションです(シミュレーションの前提・注意事項などはこちらをご覧ください )。
ポートフォリオの期待収益は4%程度なので、(A)は、元本はあまり減らないように取り崩し、(B)は35年程度で取り崩し最後はゼロになるような想定です。
2020年8月末時点での両ポートフォリオの現状
(A)年間126万円の取り崩し | (B)年間160.02万円の取り崩し | |
評価額 | 29,046,023円 | 26,818,804円 |
取崩し総額 | 8,190,000円 | 10,401,300円 |
合計 | 37,236,023円 | 37,220,104円 |
(A)(B)ともほぼ想定ライン上、順調と言えます。
分配額は自分で決める時代に
いまだ日本では、毎月分配型の投資信託の人気が高いようです。投信評価サイトであるモーニングスターの純資産ランキングをみるとETFを除く1位、2位が毎月分配型です。1997年に初めて毎月分配型の商品が売られるようになり、高齢者を中心に爆発的に残高を伸ばしました。元本を取崩しての分配金を利息と錯誤させるような販売に金融庁もメスを入れ、目論見書には分配金と収益は異なることが明記されるようになりましたが、今でも人気が続いているようです。
退職金などで毎月分配型の投資信託を購入し、毎月年金の上乗せとして分配金を受け取ることができればとても便利なのですが、実際に基準価額の推移や分配金の額などを見ると、資産寿命を延ばし、30年程度にわたって計画的に取り崩していく、というのには少し使いづらそうに感じます。
純資産額が日本で一番多い毎月分配型の投資信託を例に見てみたいと思います。(ご注意:あくまでも退職金等を運用しながら受け取るための方法についての考え方を整理する目的で、例示商品を推奨または非推奨するものではありません)
8月末時点でのファンドの状況
- 基準価額:2556円
- 直近の分配金:30円
- 分配金累計:12240円
- 設定:2005年2月
- 組み入れ銘柄:高配当の公益株(組み入れ銘柄の予想平均配当利回り:3.7% 参照:月報4/14ページ)
- 信託報酬:実質1.81%(参照:交付目論見書10ページ)
分配金多すぎませんか?
いくつか気になる点があるのですが、一番目に付くのが分配金の金額です。基準価額2556円に対して年360円(毎月30円)なので、利回りにすると約14%です。配当利回りが3.7%なので、毎年配当とは別に10%の値上がり、がなければ元本が減っていくことになります(実際には手数料があるのでさらにプラス1.8%必要)。
これを15年間やり続けているので、当初10000円だった基準価額は2556円になっています。
取崩し運用なので減っていくこと自体はよいのですが、15年で1/4に残高が減っています。これから先何年持つのか少し不安です。また分配金の額は運用会社が決めるもので投資家が決めるものではありません。状況によって増額になったり減額になったりする点にも注意が必要です。
その他にも、
- 手数料が妥当なのか?
- 公益株という投資対象が妥当なのか?
など気になる点がありますが、やはり分配金額の妥当性が最も気になるところです。
分配金は自分で決める
運用会社が毎月の分配額を決めて自動で振り込んでくれるのはとても便利なのですが、毎月分配型の投資信託だと投資対象が限定されたり、今見たように分配金の額が自身が必要とする資産寿命に適切でなかったりする場合には、取崩し額を自分で決めて、部分解約をする方法があります。この方法であれば、投資対象、取崩し期間、取崩し額、などを勘案し、自分に合ったプランで取崩しをしていくことができます。
当初決めたプランや金額が変更になる場合もあります。その場合でも、投資対象から得られる常識的なリターンからどの程度資産寿命が変わるのかがわかります。
今後については、毎月分配型の投資信託だけでなく、自分で必要な金額を取崩す、いわば分配金を自分で決める、というやり方が資産寿命を延ばすうえで有効になると思います。